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テラコッタの地 シエナ  
素朴な風合いから近年注目を浴びているテラコッタ。
語源は terra (土)と cotta (焼いた)が合わさったものです。  
シエナ南部は起元前から脈々と続くテラコッタの産地。原料となる良質の粘土がふんだんに採れるためです。それはヨーロッパ中でつとに知られています。  
ところでテラコッタといえば鍋。世界の料理ファンが愛して止まない理由はなぜでしょう?答えは実際に使えばわかります。  
テラコッタ鍋は温まるのにちょっぴり時間がかかります。しかし火から下ろしても15分ぐらいグツグツと煮え続けます。"イタリア版土鍋" テラコッタ鍋の保温性の成せるワザです。さらに独特の風合いから、鍋ごと食卓に出しても絵になってしまいます。
もうひとつテラコッタで有名なのは壷。ちょっと田舎に行くと庭先に大きな壷が置かれているのに気付くはずです。今は花が飾られていたりしますが、もともとオリーブオイルを大切にしまっておくためのものだったのです。古いものはコレクターズ・アイテムにも。保険を掛けている人さえいるのですよ!


コッレ・クリスタルでワインはいかが?  
シエナ市街から北へ20kmあまり。コッレ・ディ・ヴァル・デルサ Colle di Val d'Elsa の町があります。この地で作られる高級クリスタルガラスはイタリアNo.1の生産量を誇り、ヴェネツィアン・グラスと並んで有名です。  
特に町の上手コッレ・アルトには、ところどころに小さなガラス工房があります。店の奥をのぞくと、ガラスづくりがライブで観られることも。彼らの気迫に思わず息をのんでしまいます。   
ここはワインの地。さまざまなタイプのクリスタル製ワイングラスももちろん充実しています。
香りと色を十二分に堪能できる大きな赤ワイン用、立ち上る泡が美しいシャンパン用の細長いグラス、強い食後酒グラッパをキュッと飲むためのグラス・・・
いずれも昔ながらの製法で作られる"コッレ・クリスタル"はエレガントな輝きを放ちます。  
グラスに買ったばかりのシエナ産ワインを注ぎ、ちょっと斜めにして光にかざす。そんなソムリエ気分を気取るのもいいかもしれません。


鈴は眼のお護り  
陶器店もぜひ覗いてみましょう。中世からの伝統的なパターンや色づかいの絵付け陶器が、素朴な雰囲気を醸しだしています。
シエナ市街では大聖堂の床画を題材にしたものも。  
工房では今日も熟練職人たちが、ろくろを回しながら見る見るうちに絵付けをしていきます。傍らには無数の絵の具。各絵の具が焼きあがるとどんな色になるか、完璧に覚えています。  
そうしたお店では、店先にぶら下げて売られている小さな鈴に気付くでしょう。この陶器製の鈴は本来12月13日=聖ルチアの日にシエナの屋台で売られるもの。聖ルチアは眼の守護聖人であることから、その鈴は眼のお守りとして信じられています。その日子供たちは買ったばかりの鈴を鳴らして家路を辿ります。


職人たちの街角  
そのシエナ市街で金細工店のウィンドーをのぞけば、古代ローマ以前・エトルリア時代の装飾品をかたどったアクセサリーが。時を超えた永遠の美がそこにあります。  
さらに歩いてゆけば、教授が手塩にかけた論文を丹念に装丁する製本職人、ディテールの金箔使いにこだわり続ける額縁職人・・・。誇り高きマエストロたちが、中世を彷彿とさせる仕事を続けています。彼らは一見寡黙ですが、あなたが興味を示せば情熱をもって作品を説明してくれるでしょう。  
郊外の町や村に足をのばせば、「カチーン、カチーン」という音に出会うかも。その先の角を曲がってみてください。幼い頃童話で読んだとおりの鍛冶屋さんがあるはずです。  
ほかにモンタニョーラの黄色大理石やラポラーノの石灰華といった石のアートも、シエナ地方の伝統工芸です。

シエナの大地のウィンドーショッピングは、何世紀もの時空を飛び越える時間旅行なのです。

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