まるでパラダイス!
春の喜びを謳歌するようなポピー畑。遥か彼方まで連なる夏のひまわり。大地が黄金色に輝く収穫の秋。糸杉の丘を包む幻想的な冬の霧・・・
旧市街からちょっと足をのばすだけで、四季おりおりのパラダイスが展開します。
360°自然に囲まれて
たとえばクレテ・セネージ。シエナ市南東部に広がる粘土質の地方です。テラコッタの鍋や壷は、この土から生まれます。荒荒しい粘土の丘とおだやかな緑の丘が交互に連なるさまは、どこか地球誕生のときをイメージさせます。
シエナ市街のすぐ北からは、ワインでその名を世界的に知られたキャンティ地方が始まります。900年以上にわたって、ワインが作り続けられてきた、実り豊かな大地です。まるで継ぎはぎのごとく交互に連なる葡萄畑とオリーブ園。それらを辿るキャンティ・ワイン街道の途中、まるで舞台セットのような小さな村や教会があなたを迎えます。そしてシエナから南に向かえば、今度は壮大なボスコ(森)が広がります。
ときには道端でローズマリー、セイジ、ケッパーそしてエストラゴンといったハーブが微笑んでいたりします。
小高い丘に辿りついたら振り返ってみてください。丘の上に造られたシエナ旧市街の全容が見渡せるかもしれません。
動物たちとの出会い
緑の草原に見える無数の白い点。近づいてゆくうちに羊の群れであることがわかります。ふと足元を見ればヤマアラシのペンのようなトゲが落ちていたり。そんなことがシエナの郊外ではよくあります。森の中から道の様子を窺うシカやイノシシ、機敏に走りまわる茶色い野うさぎ、不意に行く手を横切るキジや尾長鳥・・・出会うと、動物好きでなくても思わず彼らと会話してみたくなります。
巡りかたは十人十色
こうした自然をもっとアクティブに楽しみたい方へ。メソッドは多彩です。
たとえばレンタサイクルはシエナ市街にあるほか、郊外のホテルやアグリトゥリズモ=農園民宿でレンタル可能なケースがあります。
世界中のサイクリストたちとエールを送りあいながらツーリングを楽しむ。休憩は冷たい涌き水の前で・・・。そんな夢のようなシチュエーションもここにはあります。
また、レンタルスクーターで街中や緑の郊外を疾走すれば、たまらなく旅情が盛りあがります。
古代ローマ時代からの主要路、カッシア街道を辿るのも一興。幾重にもうねる道、道端に咲き乱れる花々。ダンテ・アリギエーリをはじめ、そこを往来したいにしえの旅人と同じ感動を共有できるはずです。
ミッレミリアと同じルートをめぐりながら
ドライブ派の方は、もちろんこれらのルートをレンタカーで楽しむことができます。カッシア街道は、伝説の自動車レース"ミッレミリア"のルート。それを辿りながらシエナの自然を堪能するのはいかがでしょう。
もうひとつ、とっておきのドライブコースは、シエナ県の南約60km
にあるアミアータ山 Monte Amiata。標高1738m
のこの山は、秋に栗やポルチーニ茸がふんだんに採れることから、"シエナの味覚の宝庫"といわれています。その季節は、小さな村で行われる収穫祭に迷い込んでみたいものです。
観光列車で楽しむ
「クルマで楽しめればいいけど、運転するのはちょっと」という方におすすめは、観光列車"トレノナトゥーラ"。
週末シエナ駅を出発して、冒頭のクレテ・セネージをはじめとする南部の大地を巡ります。廃線区間も復活させたそのルートは、まさに絵葉書のような風景の連続。列車によっては、川をまたぐ橋の上で一旦停車してくれるといった粋な計らいも。鉄道好きの方にもきっとご満足いただけます。
溢れんばかりのナチュラル感覚に恵まれたシエナ。素顔のトスカーナがそこにあります。年間を通じてヨーロッパ中の人々が訪れる理由がわかりますね。